カミュ まじめ まじめ まじめ

なぜそれが頭に浮かんだのかは正直分かりませんでした。

ちょうど先週末に外部発表を終え

これから先、自分がやらなければいけないこと

自分の内側から湧き上がってきた感情をどう昇華させてやるか

ということを考えていたのですが、他方で

一度リラックスした状態に戻ろう

と思い、小説が読みたい、となったのがきっかけだったのは覚えています。

水曜日あたり、会社から帰る途中に、ふと「異邦人」が頭の中に浮かび、すぐさま書店で購入しました。

そうです、カミュが著した名作「異邦人」です。

きっかけ

最初に手に取ったのはおそらく２、３年前。書店にディスプレイされているのが目に留まり、パラパラと立ち読みしました。

最初に裏表紙に書かれているあらすじを読んだ際に、なんだか自閉症というか人の心が分からない系の主人公の話っぽいなということで、なんとなく僕自身重なるところがありそうで興味を持ちました。

ただ、それがなぜこのタイミングで頭に思い浮かんだのかは分かりません。

最近は「職業としての学問」を読んでいて、難解だったために、頭が小説を欲していたというのが僕の予想です。

あらすじ

Wikipedia等々、読んでいただければ良いですが、主人公であるところのムルソーがまさに異邦人である物語です。

彼は、母親の葬儀で特に感情も出さず、翌日には女と情事にふけり、友人の事件に巻き込まれて殺人し、死刑になってしまうのですが、自分は幸福だと信じ、処刑の日に大勢の人々が憎悪の叫びをあげて迎えてくれることだけを望むのです。

感想

まず、一人称で語られていく点、また、主人公の語りが、ジャックケルアックとはまたいささか違い、かなり冷静というか冷めている点が印象的でした。人間らしさが欠如してるといいますか。個人的にはこういった主人公の気持ちは感情移入しやすいし、共感できる部分が多いので読みやすかったです。村上春樹小説が好きな人は近いものを感じるのではないでしょうか。

ところどころの表現は、おそらく村上春樹小説にも影響を及ぼしているように思いました。「光と闇との交替」というフレーズとか。

物語の中で、主人公のムルソーは色々なやりとり、感情、現象について「意味のないこと」と思います。このあたりの考えは世間一般ではやはり到底受け入れられない感覚でしょうが、一方でたしかに「意味があるとどうしていえるのか」と考えさせられます。主人公の起こした行動の数々、それぞれに意味がないといけないのか、何かこれといった動機がないといけないのか、という点について、納得してしまいます。

世の中で起きる様々な物事、事件。それらは意外と、起こした本人でさえも説明がつかないような、本人がたとえ自覚的であった場合でさえも、実は意味なんてない可能性があるんじゃないかと。少なくとも主人公のムルソーが起こした数々の出来事は、特段本人によって自覚的に行われてはいないように、どこか他人事のようにうつるからです。

ただ、物語の最後に司祭に向かってムルソーが感情を爆発させるシーンがあり、おそらくはこの最後のクライマックス、この部分に、主人公の考えが凝縮されているように思います。これは読み返さないと。

最後に

物語自体は160ページ弱であるので、長くなく大変読みやすいと思います。読み終わって気づいたのですが、これでカミュはノーベル賞を受賞していました。この小説が評価されるということは、世の中の人々の心の中にも共感できるものがあったのでしょう。共感できるのが自分だけではないというか、むしろ世の中で評価されていたことになんだか安堵感を覚えました。

また、この作品をカミュが発表した時、彼は29歳でした。僕も現在29歳なので、これまた不思議な縁を感ぜずにはいられません。

同じ年代の方々は、文量も少ないですし一度読んでみてはいかがでしょうか。

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本文はここから
大江光　ニ短調のアダージオ他
　
初めて購入した彼の小説は、最も難解な小説の一つと言われる「万延元年のフットボール」です。この小説は、工事中の穴の中で、孤独にしゃがみこみ、核戦戦争の恐怖に耐えきれず、首をくくって自殺した親友を追想し、ひどく嘆いている主人公、蜜三郎を描いているところから始まります。 彼には、まったく対照的な性格の弟、鷹四がおり、１９６０年安保闘争で、敗北的な目に遭いアメリカを放浪した挙句、近く日本に帰って来るという設定です。

結局、妻を伴った蜜三郎と鷹四、そして、彼の崇拝者である少年と少女を加えた一団は、彼等の生まれた、愛媛の谷間の村へ新生活を始めるべく戻ってゆきます。ちょうど村は、進出してきたスーパーマーケットで、熱狂的な、消費生活の興奮で沸き返っていて、すぐ行動に移す鷹四は、直ちにその巨大スーパーマーケットを打ち倒すべく、若者を集め、訓練としてのフットボールチームを組織してゆきます。

兄の蜜三郎は、弟のそうした振舞に、冷ややかで、行動しようとは、しません。ついには彼の妻も、鷹四の方に走って行ってしまう始末。しかし、兄は、妻にも弟にも何も言わないキャラなのです。兄弟の間には、余りの性格の違いのために、お互い嫌いあっているというわけではありませんが、大きな軋轢があるのです。

また、大江さんの作家としての大きな特徴として、男女の出会い、愛の熟成などは、一般の作家にとって魅力ある題材になるはずですが、そのようなことには、例外を除いてほとんど関わりません。男女のロマンティックな愛の進行など、彼の多くの小説の中で、見たこともありません。性的な単語は、頻繁に使われることはありますが、恋愛のシチュエーションを作ることは一切、ありません。その辺は、一刀両断に切り捨てていますね。換言すれば、瀬戸内寂聴さんたちの小説とは対極にあるアンチ＝ロマンの小説家と言えるでしょう。

結局、スーパー襲撃は、江戸時代の一揆の状態になり、村人たちは、お金を払わず、安価な商品は、もちろん電気冷蔵庫なども収奪していきます。　村の言い伝えによると１００年前もこの村で、一揆があったと言われています。
その襲われる側が、根所蜜三郎、鷹四の曾祖父、襲う側が、その曾祖父の弟という具合になっています。当然、蜜三郎は、曾祖父を支持し、鷹四はその弟を擁護する立場になるわけです。

このように、振り子のようにして、１００年前の事件と密接にリンクしながら、この物語は進行していきます。　小節のタイトルも、ここから来ていると思われます。例えば、司馬遼太郎、日露戦争というものを、徹底的に調べ上げ、その結果「坂の上の雲」という小説が結実し、大いに、明治という時代が明白になり、やがて我々の心が、ゆさぶられるわけです。同様に、山崎豊子、シベリア抑留に対する徹底的な調査によって、壱岐正が経験した不毛地帯を恐ろしくリアルに、私達は、感じることが出来るということです。

ところが、大江健三郎さんの場合は、事情が全く違います。「個人的な体験」という作品は例外ですが、ある事象を徹底的に調べ上げ、その上に立ってストーりー組み立てていくというような方法をとることは、まずありません。デヴュー当時から、想像力一本で勝負してきたようなところが、見られるのです。「奇妙な仕事」、「飼育」「人間の羊」　など、みなそうです。この「万延元年のフットボール」も例外ではありません。　

確かに、大江さんの郷土の町に資料なようなものは、あ�
�たかもしれませんが、大部分、大江さんの想像力とストーリーの構成力で成り立っているわけです。しかも、文体が練りに練られています。使われている、単語、句、文型、比喩等、読みにくい文体どころではなく、素人目でも、その文体の見事さに、唖然とするばかりです。ここのところ、かなりの小説家の作品を読んでいますが、文のスタイルということを十分意識しつつ、大江さんが開拓した道を追いかけている唯一の小説家は、やはり、村上春樹さんでしょう。　ただ、花火の又吉さんもその傾向を秘めているのかもしれません。
この辺が、エンターテイメント小説と異なるところです。断っておきますが、エンターテイメント性を決して、下位に見ているわけではなく、それもまさしく、小説の命と言えると認識しています。　大江さんの小説と司馬遼太郎や山崎豊子の小説から受ける感動は、質的に別物。到底、優劣を付けられるものではありません。

今、大江さんは、カフカ、ドストエフスキー、アルベール＝カミュ、ウイリアム＝フォークナーのレヴェルにおられると思います。
「万延元年のフットボール」から、約１５年後、集大成というべき、「同時代ゲーム」が、出版されました。描写する世界は、さらに複雑になり、地方の伝説、歴史が語られているのですが、極めて現代的な文体で、恐るべきコンテンツの充実した作品になっていました。ノーベル文学賞選考委員会は、主に、この二冊から受賞を決められたのだと思っています。

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