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再婚して数ヶ月は右往左往しながら義母の世話をしていた。
少しずつ化けの皮が剥がれてきた義母のグチをダンナにこぼし始めた頃。
我が家の室内は、玄関のタタキから30センチほど高くなっている。
身体の不自由な義母は立ったまま靴の脱ぎ履きができないので、腰掛けてする。
立ったり座ったりする時や、室内に上がる時に手すりを使う。
ある日デイサービスから帰ってきて、義母が靴を脱いで立ち上がろうと手すりに掴まったら、手すりがガクンと落ちた!
咄嗟に出した私の右手は、尻餅をついた義母のお尻と床の間に挟まった。
あっっ!!
痛っ!!
つい大きな声が出た。
手すりが壊れて自力で立ち上がれない義母を、立たせた。
「あー良かった、転ばなくて」
とだけ言ってサッサと汚部屋に入った。
もちろん ありがとうなど言わず、手すりが壊れた事も知らん顔
えっ?
えっっ?
手すり、落ちたよ?
手すりの片方の端がまだ壁に付いていてブラブラになっている。
どうしようも無いので、ダンナが帰って来るまでそのままにしておいた。
右手首がズキズキする。
捻ったようだ。
湿布でもしておこう。
ダンナが帰ってきて事情を説明したら、手すりはしばらく放置しておけと言う。
義母が何と言うのか 聞いてみたい、と。
私から愚痴を聞かされる事が多くなってきても半信半疑、大袈裟だと感じていたダンナは 自分で確認したかったのだろう。
右手首の痛みが増して、私は翌日整形外科に診察に行った。
幸い骨には異常はなく、捻挫と診断された。
が、腫れて痛みもあり 手に力が入らなくて包丁がしっかり持てない程だった。
2日後の夜、義母がダンナに 切れ気味に言った。
「玄関の手すり、壊れてるのに なんで直さないの?
明日デイサービスに行くのに困るじゃない!」
ダンナ「何だ その言い方!
それで直してくれって頼んでるつもりか
人に物を頼む態度じゃないな」
義母 無言
ダンナ「いつから壊れてるんだ?」
義母「この前デイサービスがあった日」
ダンナ「なんで壊れたんだ?」
義母「掴まったら、外れた」
「私が壊したんじゃない」
「ちょっと掴まったら外れたんだら最初から壊れてた」
ダンナ「そんなはず ないだろ!体重かけて壊したんだろ!」
義母「掴まっただけだ」
ダンナ「身体が不自由なんだから 手すりを使うなとは言わん。
だけど手すりが壊れるほど体重をかけなきゃならんのは、お前がちゃんとリハビリをやらないせいだろ!」
そう、床に座って両足を前に出した状態から立ち上がるリハビリ、サボってやらなかったそうだ。
転んだ時に自分で立ち上がれないと困るからと、練習して要領がわかれば簡単だからと、言われていたのにサボったから1人で立ち上がれないらしい。
階段のリハビリもサボった。
そしてヤル気のない人は出て行って、とリハビリ病院を追い出された。
今もデイのリハビリもサボっている。
だから30センチの段差のある玄関は無理なのだ。
腕の力が頼りで、手すりにしがみついて全体重を支える。
ダンナはそれを言っている。
ダンナ「それに、お前を支えた時にナミは手首を捻って病院に通ってるんだぞ!」
義母「あ、そう?そりゃぁどうも」
謝るつもりなど、さらさら無い。
ダンナ「ナミにちゃんと謝れ!」
「手すりを壊しちゃった、悪いけど直してちょうだい。って言え!」
義母「私は壊してない!」
この堂々巡りのような言い合いは延々と続くのだった。
自分だけが使う手すりを 自分が壊した。
なのに直してと頼む事もできない。
直してもらわないと、自分が困るのに。
いつも こんな態度なのか?と聞かれたから、そうだ と答えた。
ダンナは呆れ、落胆していた。
少しずつ義母の悪態が明らかになり始めた出来事だった。