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昨日は、「経常黒字10年ぶりの高水準」という日経新聞初め、NHKその他各紙の報道は、ウソとは言えないものの、購読者や視聴者に事実に反する誤解に導く欺瞞に満ちたものであるということを、経常収支の経年変化を名目円で表示したグラフと実質ドルで表示したグラフの違いを素に主張しました。
今日は、昨日約束したとおり、それが昨日提示した1枚のグラフにのみ寄って得た結論ではない、ということを説明します。
経常収支の主な要素は、貿易収支、所得収支、そしてサービス収支です。貿易収支とは輸出額から輸入額を引いた額です。所得収支とは、日本の企業等が外国から得た配当金や支払金利その他の投資や金融取引で得た合計額から外国に支払った配当金や金利そのた投資や金融取引で支払った合計額を差し引いた額です。
サービス収支とは、モノの貿易以外に企業等が外国に提供したサービスの対価として獲得した収入から、外国から買ったサービスについて支払った額を差し引いた額です。特許料やコンピュータソフトに係る取引によるお金のやり取り収支、さらに日本人が外国に観光に出て支払った額や、反対に外国人が日本に観光に来て支払った額もこの中に含まれます。
経常収支というのは、これらの3種類の収支の合計額なのですから、それらひとつ一つの要素を見てその傾向を理解し、最後にそれらを足し合わせたのが最初に経常収支のグラフだけを見たときに得た印象と整合しているかどうかを確認すればいい、ということです。では、やってみましょう。
先ずは、貿易収支です。名目額で見た貿易収支の長期的トレンドには、特にはっきりとした傾向が読み取れません。2011から4年度にかけて貿易収支が極端に悪くなったのは、その間石油や天然ガスの価格が高騰したからです。そのことを除いてみると、貿易収支の変化に一貫性はないということです。
出典:財務省の『貿易統計』データを素に日本とアメリカの年度平均消費者物価指数及び年度平均円/ドル為替レートを加えて作成。
【鮮明な図面は、ホームページ『小塩丙九郎の歴史・経済データバンク』→「『小塩丙九郎の歴史・経済ブログ』専用図面集」→「(12)時事評論」の「12-42」の画面を見てください。以下の図についても同様に「12-43」~「12-49」までを見てください】
しかし一方、実質ドルの表示する貿易収支の推移には、財務省が公表しているデータ期間中である1996年以降一貫して減少する傾向がはっきりと認められます。その現象の様子は明確な一直線で近似できます。つまり、貿易収支の黒字方向への改善は今後望み薄ということです。これをもう少し、丁寧にみてみました。
出典:財務省の『貿易統計』データを素に日本とアメリカの年度平均消費者物価指数及び年度平均円/ドル為替レートを加えて作成。
貿易収支は、輸出額から輸入額を引いた差額ですが、名目円表示の額をグラフにしてみると、輸出額はリーマンショックによる世界的経済後退の影響で一旦大きく落ち込んだ後に堅調に回復しているように見えます。しかし、実質ドルベースで見ると、それ以降むしろ減少が始まりその勢いが増しているように見えます。ただ、この2年度間ほどに限ってみると若干の回復傾向も見て取れます。
出典:財務省の『貿易統計』データを素に日本とアメリカの年度平均消費者物価指数及
年度平均円/ドル為替レートを加えて作成。
多くの字数を避けて結論だけ言うと、輸出額に多少の回復が見られるのは、乗用車だけで、それ以外に大きなものはありませんでした。”一般機械”という品目に増加傾向が見受けられたのですが、それは半導体の製造機の輸出が伸びているからです。しかし、整理分野が”電気機器”にされている半導体の輸出額にその額を足すと、やはり、1994年をピークとしたはっきりとして減少傾向が観測されます。だから、乗用車以外に回復の兆しがある大きな品目はないのです。
出典:財務省の『貿易統計』データを素に日本とアメリカの年度平均消費者物価指数及び年度平均円/ドル為替レートを加えて作成。
乗用車が伸びているのは、平均輸出単価(実質ドルベース)が下げ止まった一方、輸出台数が少し伸びているからです。近年輸出数量が増えている例外的な品目です。そしてその台数の伸びを支えているのは、アメリカと中国、韓国以外のアジアです。しかしアジア向けは台数が増えていますが単価が大きく低下する傾向にあるので、先行きは不安定です。結局のところ乗用車輸出をしっかりと支えているのはアメリカ向けだけということになります。
出典:財務省の『貿易統計』データを素に日本とアメリカの年度平均消費者物価指数及び年度平均円/ドル為替レートを加えて作成。
しかし、今後ともアメリカ向けが伸び続けるとは思えません。トランプ大統領の貿易に対する強硬姿勢ということもあるのですが、しかしさらに大きな問題は、電気自動車で技術的に世界の先端を走るテスラが現在のところ初期トラブルで大幅な量産体制に入れないでいる状態は、早晩解決されると思われるからでます。そうなると、トヨタなどのハイブリッド型自動車の輸出台数は大きく制約される可能性が高いと思われます。
今後とも長期にわたってアメリカへの乗用車輸出が増え続けることはないでしょう。だから、乗用車の輸出額が伸びるのは、一時のことと思われます。
出典:財務省の『貿易統計』データを素に日本とアメリカの年度平均消費者物価指数及び年度平均円/ドル為替レートを加えて作成。
つまり、輸出総額は今後増えるのではなく、反対に減少し続けるとみるのが妥当だと思います。
一方、輸入総額に大きな影響を与える石油や天然ガスの輸入額は、実質円/ドル為替レートによって大きな影響を受けます。名目レートによってではなくです。
出典:財務省の『貿易統計』データを素に日本とアメリカの年度平均消費者物価指数及び年度平均円/ドル為替レートを加えて作成。
そして実質円/ドル為替レートは、1996年以降は一貫して長期円安の方向に推移しています。そして今後とも趨勢は変わることはないと思います。アメリカが安定したインフレを続け、日本にはほとんどインフレは生じていないので、それだけでもドルの実質価値は円の実質価値に対して相対的に大きな理続けるからです。そしてその時、実質円/ドル為替レートは円安方向に変化し続けます。
出典:財務省の『貿易統計』データを素に日本とアメリカの年度平均消費者物価指数及び年度平均円/ドル為替レートを加えて作成。
すでに、日本の輸入額(実質ドルベース)は急速に減りつつあります。これは輸出額が急速に減り始めたために、外国製の商品を買う力が減退したためです。だからこのブログでも紹介し
たとおり、牛肉の等級は大いに下がっており、高級食材であるエビなどの輸入も減っているのです(2017年1月27日付ブログ『若者はもう美味しい牛肉を食べられない!』を参照ください)。けれども産業と人々の日常生活の基礎を支える石油や天然ガスなどの”鉱物性燃料”の輸入数量は簡単に減らせません。
だとすれば、輸入額の大きな部分を占める(30~35%)石油、天然ガス等の鉱物燃料の輸入額(実質ドルベース)が今後再び増加することを阻むことは難しいと思います。
今までの話を総合すると、輸出額は減り続ける、輸入額中の最大の品目である鉱物性燃料の輸入額は減らずに、かえって増加する可能性も高い、つまり貿易収支は悪化し続けることになる公算が高い、ということです。そしてことのことは、以前に見た、実質ドルベースで表示される貿易収支は直線的に悪化し続けるという最初のグラフの読みを正当化します。
以上に示した通り、財務省が公表している2017年度までの貿易統計を丁寧に読み解けば、今までと同様に、長期的な日本の貿易収支が直線的に悪化し続けるという傾向は変わらないであろう、と結論するしかない、というのが私の見解です。
次回は、所得収支と経常収支全体についての今後の見込みについて説明します。
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