カメラワークのすみからすみまで徹底研究

５．役者と役者とが死力を尽くす

７月も大詰め。撮影所で、取り調べの場面。沖野が、被疑者、松倉重生を追い詰める。

諏訪部のときと同じセット。だが、演者が変わるだけで、場のムードは一変する。そもそも沖野の佇まいがまるで違う。結局、諏訪部にはやり込められた沖野だったが、ここでは何としてでも松倉を逃がさない、そんな気迫がみなぎっている。この日は、二宮和也の芝居の凄まじさに心底、圧倒された。検事としての沖野の急成長ぶりを見せつけながら、冷徹さと激情のあいだを行き来する獣性を体感させる。パッションの緩急を自在に操る柔軟性は同時に、破格のダイナミズムを生み出している。言葉の刃を突きつけつつ、しかし、みだりに暴走はしない。相手を罵倒しながらも、己の感情に飲み込まれることなく、松倉の出方をしっかり見定めている。二宮ならではの不敵なまなざしが効果的だ。ときに動き、顔に顔を近づける接近戦にももつれ込む。

徹底的に相手を打ちのめすシーンの撮影が終わると、二宮は酒向に駆け寄り、ねぎらいの言葉をかけた。その紳士的な態度に、心が癒やされる。役者と役者とが死力を尽くした後だからこそのひととき。いい現場だ。

７．遊び心満点のシークエンス

日曜日。川崎のはずれにある小さな工業地帯。灼熱の昼下がり。とある工場の大きな倉庫をお借りして、小田島弁護士事務所に仕立て上げている。沖野と沙穂が訪れ、小田島誠司（八嶋智人）と、その妻（赤間麻里子）に弁護を依頼する場面。

８．妥協のない演技と映像

千葉某所。かつてショッピングセンターだった跡地を、捜査本部に作り変えて撮影。その発想力、作り込みに、あらためて映画美術の職人芸を味わう。最上、沖野、沙穂が一堂に介する貴重な場面。沖野が最上を問い詰めようとするが、逆に最上は沙穂の秘密を暴露。返り討ちにするスリリングなシークエンスだ。木村、二宮、吉高はオフでは仲良く談笑している。だが、カメラを前にしたテーブルにつくと雰囲気は一変。それぞれが、それぞれの役に成る。最上が、沖野が、沙穂が生きはじめる。テーブルをレールが囲む。三者の芝居をカメラが円形を描くようにして追いかける。三者の心理戦を冷徹に切り取っていくカメラワーク。妥協のない演技、妥協のない映像に魅せられる。

９．待ちに待った激突

撮影所。ついに最上と沖野が真っ向からぶつかるシーン。言葉を畳み掛けていく最上。そのすべてを受けとめながらも応戦する沖野。互いの正義をかけた闘いでありながら、傷つけあうふたりの姿は哀しくも映る。木村は、最上が沖野を欺く後ろめたさをほのかに匂わせる。二宮は、最上への敬意があるからこそ追及せざるを得ない沖野の心持ちをにじませる。だから、はねのける最上の姿はせつないし、食い下がる沖野は愛おしい。待ちに待った激突は、珠玉の場面となった。

12．クランクアップ

軽井沢某所。最上の別荘で、最上と沖野の対峙。陽光の中、木村拓哉と二宮和也が語り合っている姿が眩しい。きっと、作品や役の話ではない。心から楽しそうに笑っている。ふたりの対話が終わり、沖野は外に出る。そして叫ぶ。あらゆる感情がバラバラのまま綯い交ぜになった叫び。その姿を、別荘の二階から見送る最上の顔。沖野の声も、最上の表情も、ただただやるせなく、そして忘れがたい。それから数日後、映画はクランクアップ。ときは９月初旬を迎えていた。

＊＊＊ 検察側の罪人 ＊＊＊

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学校はグラフィックデザイン専攻であった。

3DCGは独学。1980年代、当時は3DCGをエンターテインメントで扱えるオペレーターは全国でも数十人ではないかと言われていた時代…誰も教えてくれる人もいなければまともな参考書もなかった。

その後趣味でビデオカメラを手にしたが本格的に編集するでもなく友達と遊んだ時の映像記録で終わっていた。

3DCGの延長で動画をワークステーションに取り込めるようになり短いカットの動画加工をやるようになる。

そしてUターンしてその動画素材を自分で撮るべくホームシアターを撮影スタジオに改造、常設クロマキー仕様にした。

さらにそのカメラを持出しロケもするように・・・

そしてENGカメラからCM撮影では一般的になったデジタルシネカメラへと・・・

と、まぁこんな流れなのだが、撮影に関しては誰に習ったわけでもなく、大阪でCM撮影現場に立ち会うもフィルムカメラが大半だったのでそれほど興味もなく特にプロフェッショナルな撮影技術は習得するまもなく今に至っている。

ビデオ撮影の教科書的参考書はいくつか持っており一通り目は通しているがCMの撮影に流用できる部分は少ない。

そもそもCMの参考書がない。

というわけで自己流なのだが、今更大手プロダクションで修業するような年でもないので今のまま我流を通していこうと思うわけである。

時々どっぷりカメラマン出身の人から撮影方法について意見を言われることはある。しかしそれはENG。

自分の教科書はというと、今オンエアーされているよそが作ったCMである。

あんな演出、照明、カメラワークでやってみよう…てな感じである。

それを分析してみるとドラマ制作のような決まった流れはほぼ無いような気がする。

なので何の基本もない自分がやっても問題ないと今は思っている。むしろ知らないから自由な表現ができるとも…